研究室紹介

1.素粒子論とは

素粒子論は、より基本的な素粒子とその相互作用の枠組み、さらにその背後にある法則・原理について、理論的に探求する分野です。現在、素粒子は各々6種類のクォークやレプトンにまとめられ、それらの現象は、少なくとも100GeV(=1011eV)以下のエネルギー領域では、いわゆる素粒子の標準理論によって驚くほど良く説明されています。
標準理論は電磁気力と弱い相互作用を統一した電弱相互作用と強い相互作用を、全てゲージ理論という枠組みによって説明した美しい理論です。しかし一方、標準理論はその枠内では説明できないが、おそらく素粒子の理解にとって重要であろう問題をいくつも抱えています。そのためより高エネルギーの領域においては、電弱相互作用と強い相互作用を統一する大統一理論超対称性理論などの標準理論を拡張したより基礎的な理論に移行すると考えられています。さらに重力をも含む全ての相互作用と物質の統一理論として超弦理論が発案され精力的に研究されています。また超弦理論は、量子論と一般相対論の融合という基礎理論の枠組みの統一理論という側面も持っています。
一方、ビッグバン宇宙の成功と近年進歩が著しい宇宙観測によって、初期宇宙の様子が詳しく分かってきました。初期宇宙と素粒子物理は密接に関係し合い、宇宙のバリオン数や暗黒物質など宇宙論的な問題の理解も素粒子論の大きな課題のひとつになっています。

2.研究テーマ

素粒子論の研究対象はきわめて幅広く、とても1研究室でカバーできるものではありません。ここでは、現在当研究室のスタッフが研究テーマとしているものについて紹介します。

高橋 智彦:(詳しくは高橋のページを参照してください)
弦の場の理論から探る超弦理論の性質
超弦理論が統一理論として実現する可能性を探るために、弦の場の理論を用いて超弦理論のダイナミクスや諸性質の研究を行っています。

大木 洋
素粒子標準模型を超えた物理の探索とその検証
暗黒物質や宇宙進化の謎と密接に関連する標準模型を超えた新物理の候補である超対称性模型や余剰次元模型、複合粒子模型を探索する研究を行っています。それら新物理模型を検証するには、標準模型パラメータの精密決定が重要であり、強い相互作用の第一原理計算である格子量子色力学のモンテカルロシミュレーションによる理論計算を行います。また、超弦理論の現象論的性質や量子ゲージ理論の非摂動ダイナミクスの解明に関する研究も行っています。

3.当研究室の分属を希望する皆さんへ

素粒子論研究室では、4回生の1年間を通じて素粒子論・宇宙論の基礎について学び、さらに各人個別の(スタッフの研究テーマとは必ずしも関係しない)テーマでの卒業研究を行うことによって学習を深め、素粒子論/宇宙論の基礎について習得し、また自主的な研究態度を育むことを目標としています。年度末には卒業研究の内容についての発表会を行います。
前期は、「素粒子の標準理論」と「量子力学の経路積分法」についてセミナー形式で学習します。後期は、「場の量子論序論」,「宇宙物理学入門」, 「時空の幾何学」などの講義に加え、「宇宙論の基礎」についてセミナー形式で学習し、これらと平行して卒業研究を進めていきます。分属を希望する学生には、特に量子力学と相対論をしっかり学習しておくことを望みます。