セミナーのお知らせ 23-03

タイトル 複素スカラー拡張模型における電弱バリオジェネシス

講師: 出川智香子(お茶の水女子大学)

日時:2023年12月22日(金) 17:00-

場所:B1206教室

概要:物理学の未解決問題の1つに、現在の宇宙が粒子からなる物質で構成されており、反粒子からなる反物質が物質と比べて極端に少ないという宇宙のバリオン数非対称性が挙げられる。この謎を解く仮説として、電弱対称性の破れと関連してバリオン数が生成される電弱バリオジェネシスが存在する。電弱バリオジェネシスは標準模型を超える物理を示唆しており、ここでは標準模型に複素スカラー場を1つ加えた模型(Complex singlet extension of the Standard Model; CxSM)を取り上げる。CxSMには複数のヒッグス粒子が存在し、これらの質量がほぼ縮退しているとき、新物理のシグナルが抑制され標準模型からのずれは観測されないことが知られている。まず、電弱バリオジェネシスの実現に不可欠な強い電弱一次相転移に言及し、その後スカラーポテンシャル内のCP位相を標準模型セクターに伝搬するために高次元演算子の導入を行う。さらに、生成されるバリオン数の評価を行い、既存の電気双極子モーメント測定実験との整合性および重力波観測実験等の将来実験による模型の検証可能性を問う。

セミナーのお知らせ 23-02

タイトル Closed string amplitudes around tachyon vacuum solution in Kaku’s bosonic string field theory

講師: 安藤 雄史(筑波大数理物質)

日時:2023年12月15日(金) 17:00-

場所:B1207教室

概要:非摂動的な弦理論の候補である弦の場の理論では、古典解は様々なDブレーンの配位に対応する。その中でもDブレーンが1枚も無い配位に対応するタキオン真空解は、摂動的には考えることの出来ない配位であり、この解周りでは開弦が関与しない閉弦だけの理論になると予想されている。しかし、現在まで様々なボソン弦の場の理論が提案されているが、タキオン真空解を構成し、その周りの閉弦振幅が実際に予想されるものに一致するかどうかは確認出来ていない。本講演ではKaku vertexを用いて構成される理論に焦点を当て、実際にこの理論でタキオン真空解を構成し、その周りの振幅が期待される閉弦だけの振幅に一致することを確認する。

セミナーのお知らせ 23-01

タイトル 標準模型の謎と余剰次元模型

講師: 竹内 万記 (神戸大理)

日時:2023年5月26日(金) 16:30-

場所:B1207教室

概要:標準模型は2012年ヒッグス粒子の発見とともに大きな成功をおさめましたが、未だ説明できない現象が数多く残されています。その一つに、クォーク・レプトンは質量のみが異なり、スピンや電荷が全く同じコピーが3つ存在するという世代数問題があります。この3世代は偶然でしょうか、それとも必然でしょうか?標準模型ではなぜ3世代であるかを説明することはできません。一方で、この世代数を説明しうるのが余剰次元模型です。余剰次元模型において世代数は余剰次元の幾何と結びつきます。つまり世代数は余剰次元の幾何という物理的意味を持ちます。今回のセミナーでは一様磁場のかかったT2/ZN orbifold模型という余剰次元模型における世代数構造についてお話しします。

セミナーのお知らせ 22-01

タイトル 実時間経路積分をテンソルネットワーク法で計算する

講師: 武田 真滋 氏 (金沢大学)

日時: 2022年12月7日(水) 16:00-

場所: B1207教室

概要:場の量子論の非摂動的計算手法といえば、時空を格子上に定義した格子場の理論とモンテカルロ法の組み合わせがよく知られている。
しかし、モンテカルロ法には符号問題があるため、素粒子物理学の分野では有限密度QCDやトポロジー項が入った系、カイラルゲージ理論、実時間系などの非摂動的な情報を得ることが難しかった。
一方、テンソルネットワーク法には符号問題がないため、これらの系のダイナミクスを第一原理計算によって取り出せると期待されている。
本セミナーでは、テンソルネットワーク法の入門的な紹介をした後、実時間系の経路積分をテンソルネットワーク法で計算する方法について説明する。簡単な例として、非線形な自己相互作用をもつ1+1次元格子上の実スカラー場理論を考える。最後に、数値計算の結果も紹介する。

 

集中講義のお知らせ

大学院集中講義 「 素粒子物理学特論B 」

講師: 國友 浩 氏  (京大基研)

日時:2021年 12月6日(月) 9:30-
12月7日(火) 9:30-
12月8日(水) 9:30-

場所: B1207 教室(初回)

概要:超弦理論は矛盾のない量子重力理論の最有力候補であり、自然界に存在するあらゆる現象の基礎となる究極の統一理論とも期待されている。超弦の場の理論は、これに摂動論や背景時空に依存しない理論的基盤を与える定式化として最も伝統的な手法である。
講義では、開いた弦を題材に、より基本的なボソン弦の場の理論から出発し、そのゲージ不変性を保証するホモトピー代数について初学者にもわかり易く解説した後、超弦理論への拡張を行う。時間が許せば閉じた弦の場の理論についても触れる。(シラバス参照)

 

学位公聴会のお知らせ 2021

タイトル 4次元超対称非線形シグマ模型の定式化におけるアノマリーと有効ポテンシャルの解析

発表者: 近藤 綾さん  (奈良女子大学)

日時: 2021年2月19日(金) 13:00-

場所: G201教室

概要:4次元超対称非線形シグマ模型の相構造を明らかにする研究を行った。超対称非線形シグマ模型は,ゲージ化された線形模型として定式化できるとされているが,双方の量子等価性において,隠れた局所対称性に量子異常が存在することを指摘する。4次元の超対称CPN-1多様体上に基づく模型においてWess-Zumino項を加えて量子異常を考慮した有効ポテンシャルの解析を行う。量子異常をもつゲージ理論の非線形模型への量子化の手順を適応することで、精密にWess-Zumino 項を導出する。結果として,線形化された模型においてグローバル対称性が従来の線形化された模型よりも小さくなることがわかる。さらに1/Nリーディングオーダーでこの線形模型の有効ポテンシャルの解析を行った結果、弱結合領域では超対称性を保つ安定な真空が存在する一方で、強結合領域では安定な真空が存在しないことがわかった。

セミナーのお知らせ 19-04

タイトル K→ π π 行列要素のウィルソン係数の非摂動決定

講師: 富井 正明  (University of Connecticut)

日時: 2019年12月25日(水) 17:00-

場所: B1207教室

概要:CP対称性の直接的破れと深く関係する K→ππ行列要素に対する標準模型からの寄与を格子QCDで計算できる時代となった。RBC/UKQCD による行列要素の計算はチャームを含まない4クォーク演算子のみを用いてなされたものであり、チャームの寄与を押し込んだ3フレーバー理論のウィルソン係数が必要となる。これを計算するには 1 GeV 付近でのマッチングが必要であり、摂動論では不定性が大きい。本講演では格子QCDを用いた非摂動マッチングの方法と数値計算の途中経過を発表する。

セミナーのお知らせ 19-03

タイトル 汎関数くりこみ群とゲージ論

講師: 伊藤 克美 (新潟大教育)

日時:2019年8月2日(金) 17:00-

場所:B1207教室

概要:汎関数くりこみ群を用いて対称性を持つ場の理論を考察する手法について議論する.ゲージ対称性は最も重要な対称性ながら汎関数くりこみ群の手法との相性が良くない.問題の所在を明らかにし,QEDを具体例として現状を解説する.

セミナーのお知らせ 19-02

タイトル マルコフ連鎖モンテカルロ法における配位間の距離の定義とAdS幾何の発現

講師: 松本 信行 (京大理)

日時:2019年7月12日(金) 17:00-

場所:B1207教室

概要:マルコフ連鎖モンテカルロ法において確率分布がマルチモーダルである場合、異なるモードに属する配位間の遷移は難しい。我々は[1]において、この配位間の遷移の難しさを「配位間の距離」として定量化した。この距離は、局所的な遷移を行うアルゴリズムに対して普遍的な性質を持つ。また、配位間の距離を用いることで(1)配位空間に幾何を導入することや、(2)アルゴリズムのパラメータを最適化することが可能になる。 本講演では、真空が著しく縮退した系にsimulated tempering法を適用した場合に、(1)拡大された配位空間の幾何がEuclidean AdSになること、および (2)tempering parameterを幾何学的に最適化できることを議論する。本内容は福間将文氏、梅田直弥氏との共同研究[1,2]に基づく。

[1] M. Fukuma, N. Matsumoto and N. Umeda, “Distance between configurations in Markov chain Monte Carlo simulations,” JHEP 1712, 001 (2017) [arXiv:1705.06097]. [2] M. Fukuma, N. Matsumoto and N. Umeda, “Emergence of AdS geometry in the simulated tempering algorithm,” JHEP 1811, 060 (2018) [arXiv:1806.10915].

セミナーのお知らせ 19-01

タイトル Recomputing Localized Fayet–Iliopoulos Terms on S1/Z2 Orbifolds and Vacuum Instability

講師: 上村 尚平 (奈良女子大学)

日時:2019年6月28日(金) 17:00-

場所:B1207教室

概要:5次元超対称 U(1) ゲージ理論の S1/Z2 orbifold コンパクト化を行うと量子補正として固定点に局在した FI 項が現れる。局在した FI 項はバルクの波動関数の不安定性を引き起こす。波動関数が変化すると量子補正も変化するため、波動関数の不安定性は真空の不安定を引き起こす可能性がある。我々はある場合では上の予想が正しいことを示し、安定な配位とその時の波動関数のモード展開がどのように与えられるかを示す。